歯ぎしり、食いしばり、顎関節症の原因や治療について考える。

歯ぎしり、食いしばり、顎関節症の原因や治療について考える。

最近顎が痛い…歯ぎしりがある…食いしばってしまう…口が開きにくい

割と身近な悩みかなと思いますが皆さんはそんな症状ありませんか?

もちろん違和感があれば歯科医院や、口腔外科、顎関節症科など、まずは通われた方が良いかと思います。

痛みのある女性

なんで急に痛くなるの?

ですが、通ってみたけどなかなか改善が難しい、違和感があるけど歯科医院には行っていない方など

そんな方もいるかも知れません。

実際にどのような症状が多いのか私なりにまとめてみますので、悩みの改善に少しでも繋がれば幸いです。

この記事を書いている人

Has

複数の医院で働いている歯科医師。

歯科業界に15年以上関わってきた中で、患者さん本位ではない治療方針や業界の治療内容の分かり難さに疑問を持ち、自分自身で情報を発信していく事を決意しました。

患者さんの為に歯科治療の知識、考え方の幅を増やせるように情報を提供し、

より良い治療を自ら選んで受けられるようにサポートするために記事を書いています。

目次

歯ぎしりについて

歯ぎしり、食いしばり、顎関節症の治療

歯ぎしりしているかどうか、自分で分かりますか?

ほとんどの方は寝ている時に歯ぎしりを行うので、自覚がない方ばかりかと思います。

実際に患者さんにも明らかに歯ぎしりをされていそうな方に伺っても、

「いや、特にしている自覚はありませんけど?」

と答える方ばかり。

まぁ、そうですよね。と思ってしまう訳ですが、よくよく考えてみると、朝起きると顔周りの筋肉が痛かったり、重かったりする事たまにありませんか?

自覚があってもなくても

普段から歯ぎしりをされているとどうなるかを知っておいた方が良いかと思います。

歯ぎしり生活が続くと…

歯ぎしりが続くと、歯を知らず知らず擦り合わせるような癖がある感じの方が多くてよく擦る部分的のみ、少しずつ、歯のエナメル質が削れ、歯の見た目も短くなってきます。

正常な歯並びの方の場合、八重歯同士がある意味ストッパーのような役割を果していて、顎が過度に動くのを制限していて、動きをコントロールしているのですが、歯ぎしりをし続けているとその役割を破壊して、擦り合う場所が増えてきてしまいます。

そうなると、だんだんと擦り合ってきてしまい、他の前歯も短くなっていきます。

次第に、歯ぎしりをした際に擦れる面積が増えてきてより削れるようになってきます。

よく揺らされる歯は歯根膜にダメージを受けやすく、急にしみてきたり、噛んで痛みが出る場合もあります。自然と歯茎が痩せてきてしまうような場合も考えられます。

最終的には奥歯の方も削れて全体的に歯が小さくなり噛み合わせが深くなってきてしまいます。

全体でバランスと取りながら削れてしまうと、歯の表面を補強しようとして材料を入れても高く感じてしまい調整も難しく、具合の改善を図るのはかなり困難な状況になっていきます。

どこかを治療したとしても、歯の厚みがあまりないので、被せ物が外れやすかったり、割れてしまったり、悪循環に陥ってしまう事が容易に想像できます。

また、自分の歯を噛む力で割ってしまう。そんな事も起こってきます。

そうなってきてしまうと、全体の歯をまとめて治療する以外に方法がなくなってきてしまいかなり大きな治療になっていきます。

必要に応じて歯ぎしり用のマウスピースを作って歯を保護してあげましょう。

歯科治療ではマウスピースをはめてもらって経過を見て終了になる場合もあるかと思います。

緩和の方法を考える

歯ぎしり、食いしばり、顎関節症の治療

そもそも何故歯ぎしりをしてしまうのか、を自分の中で考えてみてください。

体や顎が歪んでいたり凝っていたりして自然と噛んでしまうのかもしれません。

特に噛み癖があると、人によっては前歯と前歯が触れ合うように顎を前に出す噛む位置が落ち着く方もいます。

左右どちらかに少しずらした位置で落ち着く方もいます。

どこか被せ物が高くなっていたり、歯が尖っていて気になっているのかもしれません。

重たい鞄をいつも片側だけで持っていたり、ゴルフやテニスなど、左右非対称な動きをするスポーツを長期に行っていたり、ヴァイオリンなど、顎に直接力のかかる姿勢をとっていたり。

パソコンを行なっている際の姿勢が猫背になっていたり、画面を覗きこんだような姿勢が長かったり、立ち姿勢や座り方の姿勢に癖があったり。

運動不足が続いて体が硬くなっていたり…人それぞれ要因は色々あるかと思います。何か思い当たれば体の使い方を少し気にしてみましょう。

実際の多くは噛む事でストレスを知らず知らずのうちに発散しているような事もあったりするので、何かどこかでストレスがかかっているのかもしれません。

または睡眠がうまく取れていなくて浅い眠りになっていて歯を擦ってしまっているのかも知れません。

まずは寝る前に心を落ち着かせるような時間を取って頂きたいです。

例えばゆっくり湯船に使って体を適度に温めたり、寝る前に部屋を暗くしてストレッチを行い体をほぐす時間をとったり、アロマやお香を焚いてリラックスしたり。

ストレッチを行う場合は特に、背中、肩、首をよくほぐしましょう。

特に猫背になっている方は首の後ろの筋肉や、頭部と首の境目あたりの筋肉が硬くなっている方ばかりです。

首の後ろ側がよく伸びるように意識したり、顎を少し引くようなイメージで頭の重さをしっかりと首で支えられる位置で体を使うように心がけましょう。

これだけでもかなり違いが出ます。

ほぐし終わった後で口を大きく開ける時間をとって顔まわりも伸ばしておくと緩みやすいかと思います。

首の後ろ側を両手で触りながら口を大きく開けてみて筋肉に動きを感じるか確認してみて下さい。

感じなければかなり凝っている方かなと思います。

もし、左右差を感じるようであれば、なるべく差がなくなるように、自分でほぐしながら口が真っ直ぐ開くように意識して大きく開ける時間を取っていくと筋肉の緩みが出やすいかと思いますので試してみて下さい。

このような自己努力を行うことで症状が完治はしなくても軽くなることは十分考えられると思います。

なるべく日々意識をして継続してみてください。

食いしばりについて

普段からふとした時に噛んでしまう。仕事をしていて集中している時に噛んでしまう。

そんな事ありませんか?

本来はリラックスしている時は歯と歯は触れ合っていないのが楽な状態と言われていて、そのような状態でも歯が触れ合ってしまう方は噛み癖があるという事になります。

噛み癖がある場合や集中している際に噛みしめてしまう方は顎の筋肉を多く使っている事になり、過度な筋緊張によって頬やエラが張ってきてしまったり、首の筋肉や耳周りの筋肉が硬くなってしまう原因になります。

口の中でも、舌や頬の両脇にギザギザと圧痕がついたり、下顎や上顎の一部の骨が厚くなり出っ張ってくる方もいます。

噛みしめていて良い事はスポーツ選手などは力を発揮しやすいという話があったり、踏ん張りが効くので力が出やすいと言われていますが、それ以外の状況で噛みしめていて良い事はないかと思います。

むしろ、筋肉にゆとりがなくなっていき、常に硬く緩みにくい状況になっていくので、血流が悪くなり疲れが取れにくくなったり、頭痛の原因になったりと、やはり緩める時間もないといけないかなと思います。

しかし、現代のストレス社会において、リラックスしてください。というのはやはり出来る方と難しい方がいる事も事実かなと思っています。

なぜ食いしばってしまうのか、を考えてみて、先程の歯ぎしりの緩和の方法の考え方と同じように、普段から緩める意識を持ちましょう。

特に食いしばってしまう方はお風呂上がりなどに口を開ける時間を取りましょう。

痛みのない範囲で口を大きく開けて顎関節周りの筋肉を伸ばします。

ある程度伸びてきたら、今度は口を開けた状態をキープしてみましょう。10〜20秒開け続けていられれば少しずつ緩みが出来てくるかと思います。何回か繰り返して少しずつ、無理なく緩めてみてください。

噛んだ分だけ口を開けて伸ばしてあげましょう。

顎関節症

歯ぎしり、食いしばり、顎関節症の治療

あごが曲がっている、口を開けると顎周りからポキッと音が鳴る、大きく開けると痛みがある、口が大きく開かない、などは顎関節症かもしれません。

少しは専門的な話を。

臨床的には顎関節症は4つに分類されます。

咀嚼筋痛障害(I型)
顎関節痛障害(II型)
顎関節円板障害(III型)
a: 復位性
b: 非復位性
変形性顎関節症(IV型)

この四つになります。

咀嚼筋痛障害(I型)

筋痛、運動痛、運動障害があるとされる。簡単に言えば筋肉が原因で顎が痛い場合。

顎関節痛障害(II型)

顎関節円板への機能障害が原因になる場合。例えば頭をぶつけてしまった。転倒して顎を打ったなど外的な要因や、大きなあくびをしたら痛くなった、噛み合わせで痛くなった、歯ぎしりしていて痛くなったなどの内的な要因の場合。

顎関節円板障害(III型)

関節円板の位置異常や形態異常が原因の機能的な障害や器質的障害の場合

関節円盤の動きが、開口、閉口の運動の際に、復位するかどうかでも分けられます。

変形性顎関節症(IV型)

退行性病変を主とした物で関節軟骨や関節円板などに影響がある場合。軟骨破壊、肉芽形成、骨吸収、骨添加などが見られる。

つまり、骨自体が変形していてそれが原因となっている場合。

このように、顎関節症自体は細かく分類分けさせており、精密に検査を行った上で対応を取ったほうが良い場合も多いので、

顎が音がしたり、痛みがある場合はきちんと歯科医師に相談しましょう。

また、顎が痛くても親しやずが腫れていてそちらが原因だったり、腫瘍が出来ているような場合もあるので、自己判断はやめましょう。

対応策について

顎関節症に関しては、一般社団法人日本顎関節学会の顎関節症治療の指針 2018にも記載がありますが、時間経過と共に改善し、治癒していく場合が多いので、基本的には保存治療のみを行い、患者さんのセルフケアを促す。というのが基本的な診療方針になります。

顎関節症治療の指針 2018より引用

個人の要因になりそうな事を聞いて、生活指導や、癖の改善を促します。

顎関節症治療の指針 2018より引用

やはり精神的な面からの影響が大きいので、上記のように原因になりそうな事は細かに話して頂いた方が良い治療に繋がるのでしっかり歯科医師の先生とお話ししてください。

また、咀嚼筋のマッサージを行ってもらったり、温めたり、開口の訓練を行ってもらったりします。

スプリント(マウスピースの分厚めな物で顎の動きを止めないように調整をしてある物)を使って経過を見ます。

また、先程の分類上で必要があれば痛み止めなどの薬を併用するような場合もあります。

症状が落ち着いてきた場合は以後経過観察になります。

マウスピースについて

歯ぎしり、食いしばり、顎関節症に対しては歯科医院によって対応は多少異なる事もあると思いますが、マウスピースを作る事を提案される場合が多いかと思います。

マウスピースは大まかに3種類。口の中の状況に合わせて対応を変えていきます。どれにするかは噛み合わせや症状を聞いて先生が判断する所です。

ソフトなタイプ

シリコンで作るタイプ。触ると、くにゃっと曲がるくらい柔らかい。

厚みも多少調整可能なので症状を見て調整します。多少の歯軋りや食いしばりはソフトのタイプでも症状改善しやすいかなと思います。何よりも柔らかいぶんはめやすいので、初めての方にはおすすめしやすいです。

欠点としては歯ぎしり、食いしばりが強いとよく擦れる部分で劣化しやすく、穴が空いてしまう事も。

ハードなタイプ

プラスチックで歯形に合わせて薄く作るタイプ。歯ぎしりの症状がメインの方におすすめしやすい。

はめた感じがぴったりしているので歯を保護したい時によく使用します。

前歯部に綺麗なセラミックを入れたけど、歯軋りもしていて強度が不安…という方は治療の最後にハードのマウスピースを作るのは良いと思います。

スプリント(分厚くしっかりとしたタイプ)

スタビライゼーションスプリント。噛める面を平面上に作り、全体的にバランス良く噛めるように調整する。顎の位置も安定し、筋肉の緊張緩和に繋がるので、主に顎関節症の方に使用する。もしくは歯ぎしりが強く、全体的に咬耗してきて噛み込んできている方も使いやすいと思います。

まとめ

歯ぎしり、食いしばり、顎関節症の治療

歯ぎしり、食いしばり、顎関節症は別々にしてお話しされる事が多いのですが、私は全て繋がっていると考えていています。もちろん個人差もあるので正確なことは言えませんが、

  • 普段から噛み癖がある→筋肉疲労が起こりやすい→顎が痛くなる
  • 歯ぎしりを普段からしている→肩や首も固くなってくる→筋肉の過緊張→顎が歪んできて噛むと痛みが出てきたり顎関節症になったり
  • 顎が少しズレた→噛み合わせが変わる→筋肉が痛くなる、歯ぎしりしやすくなる
  • 体が歪んでいる、硬い、運動不足→肩、首が凝ってくる→一緒に引っ張られて顎周りの噛み締め筋肉が硬くなる→食いしばりやすくなる
  • 精神的にストレスがある→気がつくと噛んでしまう→顎が痛くなる
  • 歯の被せ物が合わない→変に噛んでしまう→筋肉が痛くなる→顎関節症になる。
  • 食いしばりながら仕事やスポーツをする→筋肉が硬くなる→食いしばり、歯ぎしりの原因に

このような感じで色々な原因や要因が重なって症状に出て来ることが多いので、すべては関連性があると思っています。

何かしらの要因を取り除いたり、筋肉を緩める、顎の歪みを改善する、マウスピースをつける、などを行うと症状が緩和されやすいと思います。

まずは自分自身でできる事もあるかと思いますので参考にしてください。

・体の左右差をなるべくなくす

・身体をほぐす(特に首、肩、背中)

・口を開ける時間を取る

この辺りは普段から意識してみましょう。

症状に改善がなければしっかりと歯科医師の先生に相談される事をお勧めします。

それでは。

セラミックについてなども書いていますのでご覧頂ければ幸いです。

歯ぎしり、食いしばり、顎関節症の原因や治療について考える。

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