歯医者さんに通っていて、思っていたよりも高額なセラミックをオススメされた経験ってありませんか?

思っていたより費用も高いしどうしよう…
しかもそんな話聞いてないよ〜
でも見た目気になるし…
実際に私が普段診療していてもそういう悩みがある患者さんは多いように感じます。
どうしていきなりそのような治療が必要になるのか。何を基準に選べば良いのか。
歯科治療って分かりにくい事が本当に多い。そしてそれを丁寧に説明している時間もなかなか取れないのが現状です。
日本の歯科治療をベースに考えて、現状と、なるべくトラブルにならないようにするにはどうしたら良いかを考えるきっかけになるように記事を書いてみようかと思います。
この記事を書いている人

複数の医院で働いている歯科医師。
歯科業界に15年以上関わってきた中で、患者さん本位ではない治療方針や業界の治療内容の分かり難さに疑問を持ち、自分自身で情報を発信していく事を決意しました。
患者さんの為に歯科治療の知識、考え方の幅を増やせるように情報を提供し、
より良い治療を自ら選んで受けられるようにサポートするために記事を書いています。
それでは始めます。
そもそもセラミックって何?
歯科治療で使われているセラミックは歯科用陶材(ポーセレン)と呼ばれる物です。
陶材と聞いて思い浮かべるものはお茶碗や湯飲みなどの焼き物ですが、実際に歯科で使用する陶材も高温で焼成しています。
現在歯科のセラミックスの中でもよく使用されるのがジルコニアですが、こちらはファインセラミックと言われ
従来の焼き物に使われていた陶石、長石などの、天然の鉱物を用いて混合し、成形、焼成するといった方法を用いるのではなく
化学組成、結晶構造、製造工程などを精密に制御し製造する為、より強固なセラミックにして使用しています。
その為加工が難しいケースも多く、適合が甘かったり色合いを合わせる事が難しい場合も多かったのですが、現在は材料の品質が向上し、
ジルコニア単身で着色して使用したり、白味の強い強固なジルコニアをフレームとして利用し、見える部分を陶材で盛り付けしたりと、格段に綺麗に色を表現出来るようになってきています。
一昔前のセラミックの被せ物はメタルボンドという物が主流で、白金加金の陶材焼付用金合金の上に、手作業で陶材を盛り付けていました。
金属の上に陶材を盛り付ける為、透明感が表現しにくかったり、歯と歯肉の際の辺りはどうしても金属色を拾ってしまうので、歯肉が黒ずんで見えたり…と悩みもあり、深く削り込む工夫が必要だったり…と綺麗に見せる為の苦労も多かったのです。
この辺りはインレーというよりはクラウンの治療の際に参考となる知識なのですが、今後シリーズで書く予定なので最初にとちらに記載しました。
どういう虫歯が臼歯のインレーセラミックの適応になるの?

さて、今回は臼歯部のインレーという部分的なセラミックについての話をしようかと思います。
すごく忙しい歯科医院の場合、歯を削って型を取りましょうとなった段階で、
『これは保険の銀歯かセラミックか、どちらが良いですか?』
といきなり聞かれたりします。大体の医院はレントゲン状での歯の状況を先に説明してから治療を行うかと思うので大きなトラブルはないと思うのですが、どうして型取りが必要なのかはよく分からない場合も多いかと思います。
何故、このようになるのでしょうか。
お話しします。
Case1 小さい虫歯の場合

画像のように小さめの虫歯の場合、基本的には保険診療でCR充填(コンポジットレジン)を行います。
虫歯の部分を削って、ボンディング処置(接着剤の塗布)を行ってからコンポジットレジン(プラスチックのような材料)を流し込み、光で硬めます。
その後、研磨して終了です。

虫歯のサイズが小さければ麻酔も必要ないですし、即日で治療を終わらせる事が出来ます。
歯科医としては、ほとんどの歯をこの治療で終らせたい所。削る量も少ないし、予後も良い事が多いからです。
Case2 少し大きめな虫歯の場合

では、このような虫歯はどうでしょうか。ここからは、治療する歯科医師によって直し方が変わってくる可能性があります。
虫歯を削ってみて、歯の壁が思っていたよりも残っているような場合は先程のように即日充填でCRにて終了にします。
この場合、歯の壁が思っていたよりも残っていないと治療が難しくなっていきます。
マトリックス(透明な壁を作る材料)を用いて歯の形を手作業で成形していくので、治しやすい状況では上手く行きますが、
難しい場合は成形が困難であったり、材料を固める際に出血し、血液が混ざると上手く行かない場合があります。
出来たとしても、形をきれいに作れないので物が詰まりやすくなってしまったり、見えない部分で隙間が生じて二次虫歯になってしまう事もあります。詰めた事が原因で逆に口腔内の状況を悪くしてしまう、という事になりかねません。
その場合は後日具合を確認し、問題があれば歯型を取ってインレーという形に替えるか、
大きそうな虫歯は最初からインレーにする。という流れになる訳です。

歯型を取って物を作り、接着剤でつければコンタクト(歯と歯の隙間の形)を綺麗に表現する事が出来ますし、物が詰まりにくいように丁寧に形を作れるので虫歯の再発を考えた場合では利点が多いです。
ただし、外れにくいように溝の部分も掘り込まないといけないので、即日充填よりは歯を削る量が増えてしまうのが欠点かなと思います。
ここで、強度的に長持ちするようにと考え、保険適応の銀歯か、セラミックを選んで頂きます。
・保険の銀歯インレーと、自費のセラミックのインレーでは厚みの調整と、削る角度を変える必要がある為
どちらにするかを決めて頂いてから削って型取りという流れになります。
・同じように削ってしまうと、セラミックの場合は脱離しやすかったり、破損しやすかったりと
トラブルの原因になりますので、基本は先に確認する事が多いです。
先生によってはどちらでも対応可能なように削っておき、後ほど確認をする。という場合もあるかも知れませんが…
ここで、え!?聞いてなかったんだけど…
となる訳ですね。
そもそも銀歯の治療を望んでいなかったのに何も説明されず型取りになったり、いきなり考えてもいない高額な治療に変わったり。これは完全に歯科医師側の説明不足になるかな、と思っています。
だいたいのCaseが、上記のような流れでやむなくインレー形態にするしかない、そうしなければ歯の形を綺麗に表現出来ない、という状況なんです。
ただ、凄く混み合っているタイミングだったり、治療してみたら虫歯が深く丁寧に話す時間がなかったり、止む終えないような場合もあるのでその場合は申し訳ないですが、当日でなくても、前回の治療の際にお話ししたり、一度虫歯を取りきった所で仮の蓋を詰めておいて、次回型取りの予約、それまでに検討してもらう。などの配慮もあれば患者さんも納得しやすいかなと思います。
セラミックインレーの種類
インレータイプのセラミックの場合、医院によって名前は変わるかも知れませんが、大まかに分けて3種類選ぶ事が出来ます。
ハイブリッドインレー
レジン(プラスチック)にセラミックを混ぜ合わせ、強度を強化させた材料を用いたインレー。
この3種類の中では一番強度的に弱いが、成形しやすい為、比較的安価で作る事が可能な材質です。
色の表現も多く色合いも綺麗に合わせられますが、レジンの成分が吸水する事と、着色が着きやすく、長い目で見ると色の変化が気になる材料かも知れません。
多少の高さの誤差は表面が柔らかいので自然に削れバランスを取ってくれる面もありますが、根本的に強度を超える荷重がかかると破損してしまいます。
サイズもなるべく小さい場所であればトラブルも少ないので、歯科医に適応な歯かどうかは確認が必要です。
オールセラミックインレー
材質全てをセラミックのみで作ったインレー。
最近はキャスタブルセラミック(溶かして流し込みタイプ)のe.maxという種類が良く出ているかと思います。
e.maxは二ケイ酸リチウムガラスで出来たセラミックで、曲げ強度が400MPaあり、ハイブリッドインレーは150〜200MPaくらいなので、倍近い強度がある上、透明感もあり、審美症例には最適な材質かと思います。
ジルコニアインレー
ジルコニアインレーはここ数年、ようやく普及し始めたような段階で、強度はトランス色の用途によって、800〜1500MPaとかなり差がありますが、先程の2つと比べると段違いで硬い材料になります。
ただし、加工が難しいのと、色彩表現が他よりも少ないので、色合いが問題ないケースや、噛み合わせの問題からしっかりと被せ物の厚みが取れないような場合、歯軋り、食いしばりがあり、強度的に不安がある方にオススメです。
3種類を比べた場合
Hyb(ハイブリッド)、Ac(オールセラミック)、Zr(ジルコニア)で3種類を比べると
色彩表現
Ac≒Hyb>Zr
ジルコニアは強度が強いが色調表現に限度がある。
強度
Zr≫Ac>Hyb
費用
Zr>Ac>Hyb
製作に手間がかかる材料ほど価格が高くなる。
となります。審美的にどうか、歯の強度の問題、厚みは取れるかどうか、費用は考えられるかどうか。
とそれぞれの歯によって条件も違いますので、どの材質にするかは先生と良く話し合って決める事をオススメします。
個人的な意見を言わせてもらえるならば、費用が問題なければ、オールセラミックインレーか、ジルコニアインレーを選びたい所です。やはりハイブリッドは強度が心配なのと、吸水性が気になります。
金属アレルギーは大丈夫?
日本の保険制度において、歯科治療で使用出来る金属は組成、成分が規格として決まっており、その中で歯科医師が選んで使用しているというのが現状です。
銀歯治療というのは日本の歯科医師の先生方は普段から行う当たり前の治療となっており、細かい部分まで説明をする事はほとんどないかと思いますので御自身の知識として知っておいて欲しいのですが、一般的に被せ物として使う金属は次の2種類です。
12%金銀パラジウム合金
一般的な銀歯として使用されているのが、この金銀パラジウム合金です。組成・成分としては、金12%、パラジウム20%、と、銀50%前後、銅20%前後、その他インジウムなど数%とJIS規格で定められています。 メーカーによって多少差はありますが、組成の割合はこの規格に合わせて作られています。
銀歯、といっても強度を安定させる為に合金になっています。
口の中に数本入れる程度ならほとんどの方は問題ないのですが、本数が増えてきたり、どれかの成分にアレルギー反応が出る方はある日いきなりアレルギー症状が出てもおかしくありません。
特に金属が劣化し腐食し始めるとイオン化し唾液や血液の中に溶け出し、体内に入る事もあるので注意が必要です。
アレルギーの出方も個人差がありますが、湿疹や脱毛症、掌蹠膿疱症(手のひら、足の裏に多数の膿疱が出来る)
などが歯科分野ではよく聞きます。
どの金属にアレルギーがあるかは皮膚科にて専門に検査してもらえますので、怪しいと感じた方は相談されてみては。
歯科鋳造用銀合金
最近パラジウムが世界中での需要が増え、年々価格が高騰している事が影響し、歯科治療においても金銀パラジウム合金の取引価格が高騰し問題になっています。
保険治療において、算定する点数は決まっているのに、金属代がどんどん高くなる。そうすると、材料を多く使った銀歯で治療した場合には赤字になってしまう…そんな事も起きてしまう状況になっています。
そうなってきた背景もあり、最近は12%金銀パラジウム合金を使用するのではなく、歯科用銀合金を用いる歯科医院も増えてきました。
クラウンやブリッジにも使用出来る2種の場合
銀72%、亜鉛12%、インジウム6%、その他10%とこちらも規格が決まっています。
こちらは銀の成分比が高くなっているので、アレルギーがありそうな方はより注意が必要です。
ガルバニー電流
口の中に異なる金属同士が接触すると、唾液が電解質となり電位差が生まれ微弱な電流が流れる現象が起こる事があり、疼痛や金属腐食の原因になり得ます。
隣り合う歯に違う金属が入っていたり、噛み合う歯に違う金属が入っている場合は電流が流れやすくなる場合もあるので確認しましょう。
歯科医院によって価格に差があるのはなんで?

歯科医院ごとに微妙に価格が違うのは何故だろう…?
同じセラミック治療でも、歯科医院によって価格に差がありますよね?これは何故だか疑問に思いませんか?
まず、自費診療にあたるので、価格は歯科医院ごとに自由に決める事が出来るからです。そして医院によってかけているコストや時間も違います。
歯科医院の経営の仕方や地域差もあるかとは思いますが、丁寧に治療をしてくれて、質の良い被せ物を入れようと思えば当然費用も高くなる傾向にあります。どのような商品でも同じですよね。
丁寧な治療を心がけて治療すると、どうしても一人一人の治療に時間をかけて行いますし、予約自体も時間を長めに取りますので安心して治療を受けられます。その分治療工程にエラーが起こりにくいので良いものが出来上がります。
また、値段だけ見て安いから、高いから、だけで判断をして治療を選ぶのは結果的に損をしてしまう事もあり得ます。
何故安く提供できるのか。
それは型取りの材料費を抑えていたり、安い技工所に発注しているからかも知れません。
人件費を抑えていて技術力に乏しい方が担当になるかも知れません。
セラミックとはいえ、単色だけで表現し、手間を欠けていなければ色も目立ってしまいます。
精密に型を取れていないまま上物を製作し、接着剤で着ければ、長い目で見ると脱離や破損の原因になります。
明らかに高すぎる場合、そこの歯科医院は儲け主義なのかも知れません。
よく考えて治療内容は選びましょう。
私としては、歯科医の先生が丁寧に説明をしてくれる、かつ治療が丁寧に感じる先生で、価格に納得出来るのであれば
そこの医院にお願いするのが良いかなと思います。
まとめ
虫歯のサイズがある程度大きくなると、即日充填(CR)が難しくなり、型を取って被せ物をつけないと、コンタクトの形をキレイに保てないので具合が悪い事が多いという事は理解出来たでしょうか?
その場合、保険診療で行うと強度の問題から金属を使用して治すのでいわゆる銀歯になります。
インレーの場合は歯の一部が金属になる為、見た目やアレルギーを気にされる方はセラミックをオススメしますが、
セラミックにも種類が大まかに3種類あるので、自分の歯に合う物を先生と相談した上で選ばなくてはなりません。
歯は毎日使いますし、歯のトラブルは健康に直接影響が出ますので、安易に先生にお任せするのではなく、自分自身でしっかりと考え選ぶべきかと思います。
実際の臨床でこの内容を一人一人の患者さんに丁寧にお話しをする余裕がある歯科医院は少ないと思いますので、ゆっくりと読んで自分の通っている歯科医院の内容と照らし合わせて考えてみて下さい。
※内容はあくまで1歯科医師の個人的な考えも含んでいますので他の先生とやり方が違う場合もありますのでご注意ください
ご自身の歯科治療に役立てられたなら幸いです。
それでは。
奥歯と前歯のセラミックについても書いています。お暇でしたら。


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