さて、久しぶりに歯科治療についてお話ししようかと思います。
今回は親知らずの歯について。
意外と放置したままの方も多いので、歯科医師目線からの症状や、抜く場合はどのような状況になるのかをお話ししたいと思います。
それでは始めます。
この記事を書いている人

複数の医院で働いている歯科医師。
歯科業界に15年以上関わってきた中で、患者さん本位ではない治療方針や業界の治療内容の分かり難さに疑問を持ち、自分自身で情報を発信していく事を決意しました。
患者さんの為に歯科治療の知識、考え方の幅を増やせるように情報を提供し、
より良い治療を自ら選んで受けられるようにサポートするために記事を書いています。
親知らずの歯について
大体20歳前後くらいに急に生えてくる前から8番目の歯です。
昔は50歳前後が平均寿命だった頃、親が8番の歯が生えてくる頃まで見られなかったような時代背景から、親知らずと言われています。
日本人は顎が小さめで、8番目の歯がしっかりと綺麗に生え揃う人の方が珍しく、多くの方は曲がって生えてきます。
その為、生えようとしてくる時期は奥歯が疼いたり、歯茎が腫れたり、歯並びがズレてきたりと色々な悩みが出てくるわけですね。
この時にどうすれば良いかは人それぞれ変わってきます。
①ある程度真っ直ぐ生えている場合
他の歯もしっかりされていて、真っ直ぐに生えようとしている方は綺麗に生えきるのを待つのも一つです。
歯磨きさえしっかり出来て虫歯にならなければ無理に抜く必要もないかと思います。
綺麗に生え揃わなくても手入れがしっかりできそうであれば置いておくメリットも一応あります。
どこか他の歯の具合が悪くなり、抜歯になってしまった際に、親知らずの歯を移植する。という手があります。
ただ、これはある程度若い頃の方が歯と骨のつきが良いので成功する確率が高くなりますが、もちろんうまく今ない場合もあります。
後々のことを考えて無理に抜かない。こういう選択肢がある事も一応覚えておきましょう。
移植をした場合は安定するまで歯を固定、根の治療を行なった後、最後に表面を被せてしっかりと咬ませて終了です。
②曲がって生えていて頭が少し出ている場合
日本人の多くは顎が小さめな為8番の歯が真っ直ぐに生える隙間がない方が多く、斜めや横を向いて生えようとしてくることが多いです。
![[歯科治療]親知らずの歯について。抜いた方が良いの?費用は?](https://ccafeblog.com/wp-content/uploads/2020/12/oyashirazu002.png)
横を向いていると手前の歯との隙間に物が詰まりやすく、歯肉の炎症の原因になります。
腫れると痛みも出ますし、嫌な匂いの原因にもなります。
また、物が詰まりやすいと虫歯にもなりやすいので、手前の歯との間が両方虫歯になってしまう方が多いです。
しかも、このようなケースの場合、手前の歯の虫歯になる場所がかなり深い所になってしまう為器具がしっかりとは届かず、綺麗な治療を受けるのは困難です。表層をCR(プラスチック)等で蓋をしたとしても後日痛みが出てしまい、抜髄に(神経を取る治療)
なってしまう方がかなり多い場所になります。
ですので、トラブルになる前に早めに抜いておいた方が良いのです。
位置が比較的浅い場所にあれば抜歯も容易になるので、開業医の先生が抜歯してくれる事もあるかと思います。
リスクの高い抜歯になると、開業医では対応が困難になる為、大きな病院の歯科口腔外科に紹介される事もあるかと思います。
口の中には生えておらず、骨に埋まっている場合
位置がかなり深く、口の中には頭も出ていないような状況の方もいます。
抜歯をすると太い血管が近かったり、神経を痛めてしまったり、抜いた後の疼痛が続く事も多いので、抜く事自体に慎重になった方が良い場合も多いです。
感染してしまった際に腫れる場所も深くなり、症状が大きくなってしまう事も多いので、腫れたりする前に歯科医師と相談された方が良いでしょう。
また、位置が深すぎると嚢胞などになったり、腫瘍になったりする場合もあるので、定期的に検査が必要な場合もあります。
抜歯をする場合には、基本的には歯科口腔外科が担当になるかと思います。
また、大きな病院の場合、静脈内鎮静法という少し意識が薄くなる点滴を用いて抜歯を行うことも可能なので、怖い方やまとめて抜きたい方は開業医の歯科医師の先生から口腔外科を紹介してもらいましょう。
口腔外科の場所によっては、一泊入院くらいで4本まとめての抜歯の対応をしてくれる事もあります。
一度で済むので楽ですが、その分腫れた時に生活するのが多少困難になるかもしれません。安静にすることも大切です。
抜く場合はいつ頃が良いの?腫れる??
仮に、抜くとして、いつ頃が適切なのでしょうか?
個人的には、20歳前後の生え途中の状況の頃が、歯も骨とのつきが弱く、比較的に安全に抜ける為オススメです。
もちろん、その方々の状況によるので、確実な事は言えませんが、歯科医師目線から言うと、柔らかい内に済ませておいた方が苦労が少ないかな。と思っています。
人によっては30歳前後くらいまでにかけてゆっくり生えてくるので、ある程度頭が出てきてからより安全に抜く。
という方針の方もいます。
多くの方は学生時代の時間がとりやすいタイミングを狙うか、社会人の場合でも仕事を休みながら、という方が多いですかね。
その年代に抜いている方は骨とのつきが少ない時の方が、抜歯の時間も短くなりやすく、安全に抜ける上に、腫れも少なく、治りも早い。
というイメージですね。
これが、位置が深くなってきたり、年齢を重ねてくると、だんだんと固くなってくるので、歯の周りの骨を多めに削らないと抜けなくなってくる為、時間がかかる、腫れやすい、治りにくい。
となってきます。
そして出血はある程度あったほうが良くて、抜歯した部分には血が溜まらないと傷が治りにくいんですね。
ですから表面は糸で縫って閉じてあげて、血が溜まりやすくなっていた方が治ります。
ただ、その分、出血が多すぎる方は顔が腫れてしまったりしますね。
人によっては漫画みたくパンパンに腫れたり、表面がアザみたく紫や黄色になったりする方もいますが、
おおよそ一週間もすれば自然と収まるので安心して下さいね。
痛み自体は抜歯中は麻酔が効いているのでほとんど痛みがなく対応できます。抜歯後も痛みがあれば痛み止めの薬を飲んでもらい様子が見れくらいの方が多いです。
もちろん位置が深く、
逆に、出血の少ない方の方が心配で、ドライソケットといって、抜歯窩の傷の部分に血液が溜まらず、歯肉がうまく被らなかったりするとなかなか治らず痛みが続いてしまう事もあります。
抜歯をした後は体を安静にして、免疫力がなるべく働きやすい環境を作ってあげることも大切です。
私は学生時代、担当してくれていた外科の先生と、同級生の方と一緒になって抜歯をしてもらいました。
抜いて頂いたのは下顎の8番。横を向いていました。
抜歯後、友達に縫合してもらい、そのまま直ぐに実習を続けていましたが、しっかりと止血処置が行えておらず、次の日まで血が止まらなかったという苦い思い出があります笑
朝目が覚めたら枕が血まみれになっていました…笑
皆さんは止血処置大切ですから、抜歯後は安静にして下さいね!
辛いものや酸っぱいものを取ると傷口がよくしみたのを覚えているので、自分の実体験を元に抜歯を担当した患者さんには注意事項をお伝えしています。
抜歯の費用は?
歯の位置によって保険算定の内容が変わりますので一概には言えませんが、おおよそ3割負担で2000〜6000円程度になるかと思います。
入院をしたり、初診当日に抜歯をすると費用はもう少し高くなるかと思います。
海外での抜歯の価格は10万円前後だったりするので、日本の保険制度の手厚さがよくわかりますね。
まとめ
いかがだったでしょうか?
まだ親知らずは抜いていない、口の中にあるかを把握していない、奥歯の歯茎がなんとなく痛いなど、気になる方は歯科医師に相談してみましょう。
手慣れた先生の場合、抜歯も短い時間で終わる事も多いですが、予想外に根が曲がっていたり、根の先が開いていたりするような事もありますので、絶対という事はありません。
1人1人歯の形も違うので、難しい抜歯と言うのがどうしてもあります。
相談をしてみて、信頼が置けそうな環境で抜いてもらいましょう。
それでは。

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